2006年6月8日(木)
朝6時54分 フランクフルト空港駅発 ミュンヘン駅行
車窓から見る景色は23年前とほとんど変わっていないように感じられた。
ずっと草原が続き、牛が草を食み、どこまでものどかである。
それが永遠に続くかのようだ。
やがて遠くに教会の尖塔が見え、その周りにはレンガ色をした積雪を避けるためであろう鋭角な屋根が、ひっそりと教会を取り囲む絵柄が続く。
教会を中心にした文化が長い時間をかけて熟成されてきたであろうことを容易に想像させてくれる景色。心が穏やかになる。
きっと彼らは日曜のミサのたびに家族連れ立って教会に行き、ある時は懺悔をし、またある時は、神に今後の歩むべき道筋について問うているのに違いない、などとそこに住まう人々の生活を想う。
どんな人生なのか、平凡なのか、幸せなのか。
そんな事はただの通りすがりの旅人である「異邦人」の勝手な思い過ごしなのかもしれない。
そんな想像力をかきたたせてくれるから、旅はやめられない、などと思っているうちに、背の高い白樺の林が窓外を走る。それを過ぎると、やがてまた遠くに教会が見えてくる。
そんな事の繰り返しであっという間に、時速200Km以上を誇る「ICE」(Intercity Express)という特急は、ウルムの世界一高い塔を持つ大聖堂を経て、ミュンヘン中央駅のカマボコ型駅舎に静かに滑りこんだ。
時計を見ると午前10時30分だった。
さぁ、ここで下車してスタジアムに行き「チケット交換」だ、と”空想”の世界から”現実”の世界に戻る。
実券を入手して目の当たりにする楽しみと譲渡手続きがうまくいくか、若干の緊張感がはしる。
旅は誰をも詩人にさせることを実感したオット・・・
つづく
ズボラなオットの緻密な旅計画<10>
2006.07.13
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